銀時は読んでいた新聞紙をばさりと置いた。
「いーつーきーチャン」
「・・・・変な声音を使うな」
「ん」

ポンポン、と、自分の隣を掌で叩いて銀時はを見上げる。
は頬を染めて顔を逸らした。

「・・・い、いまから・・・用事が」
「隣に、来て。お願い。」


の言葉に被せるように銀時が囁く。
この男は本当に卑怯だ、と、は思った。


お願いがこんなに上手な男は他に知らない。










ゆびさき










それは多分、ほんのちょっとした、戯れで。そしてそこに潜む途方も無い愛で。

銀時はそれが幸せであることを重々承知していたし、
はそれが幸せであることを尽く思い知らされているだけ。



「・・・・・・」
「・・・・・・」


互いに無言でソファに座り、TVからは明るい声が響いていて。
視線はやはり互いにそこに向かっているのに意識も何もかもがさり気なく繋いだ手に集中している。

先ずは挨拶程度に軽く握って。

それから指を絡ませて、そして指先を触れ合わせ、
指紋から溶け合ってしまえと願ってみるが本当に叶うのは嫌だった。



二人はこうして一つになる事を冀いながらそれでも一つにはなれず、
そうしてもどかしさを感じながらそれはどこか甘く、深く、響くものがある。

二つだから繋がれて、繋いで、体温を感じ時に汗や蜜を感じ、
溢れさせてはそれを飲み込み、繰り返しそうして互いを埋め尽くしてゆく喜び。



「あー・・・なんか、腹いっぱいだな」
「・・・ああ」
「糖分過多だな」
「ああ」
「・・・はは」




短い言葉で肯定されれば、それは熱い腕で受け入れられるのと同じだった。
皮膚や粘膜を感じる関係でありながらそれは間違いなく歓喜に震える瞬間。


銀時は、であり他の誰でもなく、また同時に自分と交わりながら溶け合う事は無いのなら
この手を離さない限りはきっと一生ずっとこうしていられるだろうと確信した。