「えー、勝敗は両陣営代表三人による勝負で決まります。
 審判も公平を期して両陣営から新八君と俺、山崎が勤めさせてもらいます。」



司会を兼ねて進行をする山崎とその隣に新八。
向かい合って座る万事屋メンバー、銀時、神楽、妙と
真選組メンバー、トシ、総悟、近藤。

は神楽と妙の間に膝を着いた。

「俺と代わろう。もう一人は新八と。」


純粋に女性を気遣うその紳士さに、妙は少しだけ頬を染め、神楽は嬉しそうに笑った。
そして双方共に首を横に振る。
これは彼女達の戦いでもあった。とお花見するための。


は困った顔をした。女性は守るものと信じて疑わない彼は対処に困惑する。
溜め息を吐いて諦めた。



「勝った方はここで花見をする権利+お妙さん+さんを得るわけです」

「何、その勝手なルール!!あんたら山賊!?それじゃ僕等勝っても±0でしょうが!!」



平然と言ってのけた山崎に新八は顔色を変えて食いかかった。
しかし山崎も、くさっても真選組。

ギロリと新八を睨んだ。




「何言ってるんです?さんが自分達のものだとでも?」

「え?」



山崎の視線の鋭さに新八は数歩後退した。
恐るべしさん。ここにもその魅力に囚われた男が居たのか。そう考えて眼鏡を指で押し上げる。



「・・・しかしですね、それを措いても理不尽じゃないですか」



新八の言葉に、山崎はヤレヤレといった風に溜め息を吐いた。
新八、突っ込みたいのを必死で堪える。

山崎はその外見からは予想もつかないがれっきとした真選組の密偵である。
無闇に刺激するのは賢くない。

山崎はゴソゴソと懐に手を入れ、何かを差し出した。



「じゃー君らは+真選組ソーセージだ!屯所の冷蔵庫に入ってた」

「要するにただのソーセージじゃねえかあああ!!」



新八の突っ込み気質は我慢の限界に達し、大声で怒鳴った。

しかし。




「ソーセージだってよ。気張っていこーぜ」

「おう。」



俄然ヤル気を出した銀時と神楽に、新八はズッコケる。



「バカかーーー!!お前らバカかー!!」



怒鳴り散らす新八の頭に、銀時はポンと掌を置いた。
そしてじっと新八の目を見詰める。



「あのねえ新チャン。と花見するには避けて通れない戦いなワケよ、これは。
 勝てばとソーセージ。バカで結構、それが愛ってモンだ」



ふざけた台詞には不釣合いなほど真剣な銀時の双眸に新八は頬を染めた。
に関するとなると銀時は瞬時に“男”を匂わせる。絶対的な愛を見せ付ける。
新八には少し刺激が強かった。




一戦目が、始まる。










エピソード13    愛に敗れる男達










妙VS近藤。
その勝負は一瞬で終わった。

ルール無視の妙の攻撃により、近藤が意識を失ったのである。
日頃の近藤のストーキングに怒り絶頂だった妙は、抗議を申し立てる(というか怒り狂う)真選組一同を一瞥し、



「やんのかコラ」



の、一言で沈静化させた。その場のほぼ全員(なぜか銀時と神楽まで)土下座をして謝る。




「新八君、君も大変だね・・・」

「もう慣れましたよ」



山崎はそっと慰める。新八は悟りきったようにそれを受け流した。
少年はこうして大人になるのだなあと山崎は見当違いな事を考える。
実際はこうして性格破綻者が生まれるのだ。

薄情にも勝負は続けられる。結局近藤よりも獲得に重きは置かれたのだった。
山崎は平然と進行を再開した。



「えーと、局長が戦闘不能になったので一戦目は無効試合とさせていただきます。
 二戦目の人は最低限のルールは守ってください・・・・・」




そこで山崎はやっと気付いた。勝負は既に始まっていたのだ。
二戦目は神楽VS総悟。

超人的な勝負のその光景に皆の視線が集まり釘付けになる。
放置された近藤の傍には静かに歩み寄った。




「大丈夫ですか、近藤さん」

「・・・・う、ん・・・?君?」

「少し動けますか?」




はそう言って近藤の傍に正座をし、近藤の頭を自分の太腿に乗せた。
通称膝枕。多くの男児の夢のシチュエーションである。

しかしに一切の下心、もしくはやましい感情を持っていない近藤はすまなさそうに顔を歪めた。
どこかで濡らしてきたのか、冷たい手拭いが額に置かれ近藤は目蓋を閉じた。緩やかな眠りに誘われる。

にとって近藤は信頼の置ける、そして好きな人物だ。
嘘のない近藤の性格には憧れさえ抱いている。

故に、と近藤の様子を見咎め(というか単なる嫉妬だが)鬼の顔で近付いた銀時とトシを
は容赦なく睨み上げた。二人は固まる。




「何の用だ。勝負はどうした?」



「いや、あの・・・アノデスネー、ちゃん?その体勢はあんまりじゃないかと・・・」
俺だってしてもらった事無いよね?と銀時は控えめに呟き、トシは目を逸らし舌打ちするだけに止まった。




結局逆らえないのである。世界すらも望むとおりにと、愛した人の前では。

二人はすごすごと退散し、正規の勝負すらも投げ捨て酒に手を伸ばした。急遽、飲み比べ対決開始である。
実際は単に、酒でも飲まなければ耐えられない状況だっただけだが。
彼等の記憶はここで途絶えることになる。



単純な殴り合いと化した神楽と総悟の勝負。
そして見事な酔っ払いとなった銀時とトシの、真剣での阿保な勝負。

そして妙に殴り倒されの太腿で眠る近藤と、
それを蹴り飛ばそうとする妙。止める
女性が相手ではかなり逃げ腰になる為、結局近藤は蹴り飛ばされた。

目の前に広がる惨状に新八は呆然としたが、
心の奥底で近藤に対し「ザマーミロ」と思っていたことは生涯の秘密である。


結局新八は山崎に慰められ、暴れまわる人物らを無視して花見を堪能した。
の背後にあった重箱は最後まで再び開けられる事はなかった。

新八は意を決し、に近付くと小さく耳打ちした。




さん」

「?・・・どうした?」

「僕にもいつか・・・お弁当作ってくれませんか?」




新八の言葉に、は幸せそうに笑って頷いた。








その後。



公園内の自販機の取り出し口に頭を突っ込んで寝ていた銀時は目を覚ました。
周囲は暗闇。静まり返っている。

ヤレヤレ、と頭を掻き帰ろうとする銀時の背中に声が掛けられた。




「薄情者。目を覚ますのを待っていた俺を置いていく気か」

「・・・・、!?」




慌てて振り返れば、そこにはの姿。
重箱を抱え、自販機の隣に腰を下ろしている。

花見の時期とはいえ、まだ夜は空気も冷たい。
銀時はに駆け寄り屈んでその頬を両手で包んだ。



「帰ってよかったのに」

「・・・うるさい」



はムスッとして重箱を差し出した。





「食べると言ったのはお前だ。今日中に食べないと悪くなる。
 ・・・自分が作ったものを食べている所を見たいというのは当然の権利だ!」





照れたように言い放つを銀時は唖然として見詰めた。


可愛い。可愛い。完全にイカレた。

銀時は顔を両手で隠し唸った後、から重箱を受け取って


「いただきます」



蕩けそうな表情でそう言った。


















後日、銀時からの手作り弁当を死守する新八の姿と

三人で重箱をつつくトシ、総悟、近藤の姿が目撃された。







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あー・・・お花見終了ー。
何か、省略しすぎた気がする。・・・ま、ドンマイ!
次からは○○登場の伏線になるかと・・・まあぶっちゃけ何も考えてないような。