「祭り?」
「あー。花火も上がるんだぜ。も行くだろ?」
エピソード14 出動宣言
万事屋にて。
デレデレと頬を幸せそうに緩めたまま銀時が尋ねる。
どうしようか、とは思案し、その姿にまた銀時の目尻が下がる。
アンタいい加減にしろよ、と新八は溜め息をついた。
それでも羨望や一種の憧れは消えないのだからどうしようもなかった。
「なんだよ、行かねーの?」
それは駄目アル!と銀時の言葉に何故か神楽が叫んだ。
が行かないとなると銀時も行かないだろうと踏んでの行動。しかもそれは的を得ていた。
まさにその通りなのである。
は小さく手を振って否定した。
「・・いや、行くには行くが・・・そういう行事はが大好きだからな。
多分、社内行事になる。社員としてはそっちに参加するべきだろう?」
は当然のように言い放ち、銀時は忌々しそうに顔を歪めた。
過去に出逢ったの顔を思い出す。
寝惚け面で、ヘラヘラ笑ってはいても圧倒的な何かを感じさせる。
銀時は白状してしまえばが苦手だった。
しかしそこはそれ、譲れないものというのはあるのだから。
苦手だというだけで愛を手放すほど銀時は愚かではない。
「・・・・銀サンが直談判しようじゃないの。」
ヤケクソ気味の決意で言い放つ。
しかしは憐れむようにゆっくりと首を横に振った。
「やめておけ。口でアイツに勝てる奴はいない」
銀時は「愛の力で勝てるさ」と言おうとしてやめた。
にも絶大な愛がある。に対しての。
それを思い出したからだ。
それはが見せると言う人物に対しての信頼の大きさで分かりきったこと。
勝ち負けの次元ではなく、それは確かに存在していて。
項垂れた銀時を憐れに眺めつつ、新八は「銀さんとさんは似ている」と思った。
至上主義。その一点に関しては酷似していると言っても良いだろう。
さんは多分、銀さんとは違う方法でさんを守っている。それはさんも気付かない距離で。
背中を合わせあい、時には向かい合い、そして並び立つさんと銀さんの関係とは違う、守護。
遠く離れた位置で茶を啜りながらソレを眺め、けれどけして武器を手放さない。
目を逸らさない。そういう人物だと新八は思う。
その評価が正しいかどうかは以外に判断できないだろう。
掴み所がないというのは結局、誰にも本質を見抜かせないということだ。
ああ、そういうのは銀さんとは似ていないな、と新八。
銀時はあれで、結構分かりやすい。
その刹那。
「別にエエよー?俺は今回パスやし。各自自由にどうぞ」
降って沸いたような声に、万事屋一同+は文字通り吃驚して玄関を振り返った。
そこに立っていたのは言わずもがな。
「・・・・いつから居たんだ、」
。その人だった。
「なななななんで、ここに!!」
「なんやの、お兄さん。人を指差したらアカンて習うたやろ?」
ドペチ。
震えながらを指差した銀時は、笑顔のの手によってデコピンで撃墜された。
「す、さん・・・今日はどうしたんですか?」
新八は多少怯えながら尋ねた。
ニヤリと笑う。たじろぐ新八。見守る。
「ん、あんなー暫らくを万事屋に置いてほしいんよ。」
「ええ!?」
「なっ・・・・」
の突拍子も無い言葉に新八は眼鏡をズリ落としかけながら大声を上げた。
にとっても寝耳に水だったらしく口を大きく開けて唖然としている。
そして、異常にテンションを上げた男が一人。
「まじでええええええええええええええ!!?
OKOK全然OK!!てゆうか貰うから、嫁に!一生返さない!!」
返さないモンねーー!!
叫ぶ銀時には眉を顰めて軽い頭痛を感じ頭を押さえた。
そして今更ながらに身の危険を感じる。
まだ全てを受け入れるほど、想いは高みに到達してはいない。
しかし銀時の有頂天なその様子は可愛くも、あった。
可愛いってなんだ!?とは多少うろたえる。
そんなの頭をが“よしよし”と撫で、は「お前のせいだろう」とを睨んだ。
涼しげに笑う。
視線は銀時に向いている。
「ん、ええよ。兄さんボコボコにして奪い返したるから」
銀時にだけ見えるように向けられた絶対零度の微笑みに、銀時は固まった。
そしてその場でいじける。
「・・・・・・・・・」
「なんや、もう終わり?踊ったり膝抱えて泣いたり忙しいやっちゃなー」
を賭けた勝負は、まだまだの方が上手のようだ。
「・・・・なんなんだ、いきなり、・・・そんな話」
一拍おいて、はに問うた。
心の中で「銀時に助力するわけじゃないが」と付け足す。素直じゃない。
そのの内心を見透かすようには柔らかく微笑んでの髪を指先で梳きながら、一度頷いた。
「宿舎をなー、建て替えよう思うてん。せやけど、ホラ。俺の実家はお前さんには窮屈やろ。
・・・せやからココがエエ思うたんよ。」
「・・・・それは、俺が銀時にする話だろう」
どこか拗ねたようには呟く。
「素直にしそうにないやん?先手必勝。」
しかしやはりの方が上手だった。は言葉を失い、代わりに再び睨む。
「・・・本当にそれだけか?」
疑心とは違う、それは純然たる疑問。
は必要とあれば、の部屋くらい簡単に用意する人物である。
銀時の傍に自分を居させなければならない理由があるのではないかとは思った。
自分に隠れて何かを考えているのではないかと。
「・・・それだけや。敵わんわー信じてぇな」
の言葉には溜め息をついて頷いた。
時間は流れ場面は変わる。
経営新聞社の職員、その中でも限られたメンバーは何故か完全武装してとある一室に集まっていた。
その中心に、腰に二本の短剣を携えたの姿。
「・・・・というわけや。情報提供は攘夷党、桂。
信頼できる筋やから気合入れて取り掛かり・・・・ええな?」
の声に「押忍!!」の掛け声。
その中の一人が挙手をした。
額には“親衛隊隊長”と書かれた鉢巻。
「なんや、彗?」
「任務内容は“高杉掃討”でいいんですね?」
「・・・・せやな」
はにたりと笑った。
大事なものとそれ以外を完全に切り離す冷酷な笑み。
それにつられるように彗と呼ばれた男も笑む。
何の事情も知らない第三者から見れば、こんなに怪しい団体はそう居ないだろう。
「せや。獲物は“高杉晋助”・・・・に接触する前に確保や」
かくて、かの武装警察真選組よりももしかしたら物騒な集団
“親衛隊”が出動した。
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真面目な・・・話を書いてたはずなのに、オチが明らかにギャグ・・・・。
今回はやっとこ親友クンの出番のようで。・・・・イキオイで書いちゃったけどどうしよう、コレ・・・・。
彗とは“ほうき”と読みます。・・・・どうでもいい・・・・?