出会いは鮮烈、電光石火。
まるで真昼の流星群。ありえない輝きとありえない速さで、心を奪い去ってゆく。



「驚いたな、まさかここまで喰い付いてくるなんて」
「世間でどんなに持て囃されようとも、僕はお前のような独善者は許さない。」

闇夜を彩る建物の明かりの僅かな恩恵を受けて、二人の姿はボンヤリと浮き立つ。
とあるビルの屋上、他に人の姿は無い。

高いフェンスのその上に優雅に立つ男は、白いマントを翻して振り返った。

下から見上げるスーツの男には、それがまるで月を背負う白い鳥のように見える。
それが怪盗キッドとの、出会った時から変わらない逢瀬のようなひと時。
キッドはシルクハットの影で幼く(歳相応に)微笑んで口を開いた。

「独善?まさか。・・・私はそこまで酔狂ではありません」
「俺の目には愉快犯と同じようにしか見えないが」
「心外だなァ。確かに、今この時を喜んではいますが。
 貴方と二人きりになれたこの幸運を。」
「二人きりが好きなら大人しく捕まれ。・・・特別に取り調べは僕と二人きりで行ってやる」

キッドは少し思案して、それから頭を振った。

「魅惑的ではあるんですが・・・それじゃあ満足できないんですよ、生憎と。
 無粋な監視があるでしょう?」
「俺には心許無いくらいだ」
「俺には途方も無く、邪魔なのさ」

最後の言葉はどちらかといえば“黒羽快斗”のものだった。口調もそれを表している。
どこか作り物のようなキッドのものではない純粋さ。

目の前に立つ、
皺一つ無いスーツに身を包んだという男に寄せるものはそういう感情だった。

は、フ、と酷く冷淡に笑って懐から銃を取り出した。そうして、銃口をキッドに向ける。
その表情と動作はどこか洗練された美しさがある。
キッドの背中にゾワリと何かが走った。

あの目が。あの眼差しが。あの男が。
自分を追って走る様を思い浮かべるだけで、なんともいえない感銘がある。


ゆっくりと何かを味わうように微笑むキッドにはやはり冷たい声音で言い放った。


「観念しろ、コソドロ」
「捻りの無い言い回しですね、刑事殿」

君に背中を狙われるのはいつの間にか快感で、喜び。
そうして君の瞳を釘付けにしてゆっくりと根付かせる、俺という存在。

どちらが追う者で、追われる者か。
まるで騙し絵のように、正しさなど分からないままで。