これは未来の話。






コンビニの袋片手に細い道を歩いていたは、ヒタリと足を止めた。
寝惚けた表情を崩さないまま、前を見据えて呟く。

「久し振りやな雇われ殺し屋。ツナ引き連れてイタリアに行ったんとちゃうんか?」

振り返らずに背後の人物に語りかける、の背中。
細く白い項。猫っ毛の柔らかな髪が寝癖をつけたまま風に揺れている。
それらをじっと眺めてリボーンは「くっ」と笑った。

記憶の中に残した姿と何も変わっていない。
今だけはそれが純粋に嬉しいとリボーンは思う。

そして数年の年月の間に自分の目線は地面から遠く離れ、代わりにに近付いた。
それも嬉しい。

地面を踏みしめたまま、踵を上げなくてもキスができる近さだ。

「ツナの傍、離れてエエんか」
「家庭教師の仕事は終了だ。今のツナにはファミリーがいるしな」
「・・・さよか、ご苦労さんやったな」

振り返るの瞳に揺蕩う淡い絶望は今も昔もリボーンの心を掴んで離さない。

リボーンはゆっくりとした足取りでに近付き
手を伸ばせば捕まえられる距離で足を止めた。

帽子の影で微笑んで、口を開く。

「お前に逢いに来たんだ」
「・・・なんでや、もう飽きるくらい一緒に居ったんや。もうエエやろ」
「確かにそーだな。だがそれが全てじゃねーだろ?」
「・・・・・・・・、・・・・・・」
「おまえの未来もオレは欲しい」

軽口の延長のような、ごく自然な動作でリボーンはに顔を近づける。
そして、ちゅ、とわざと音を鳴らして離れる唇。

「だから攫いに来た。」

の腰を抱き寄せるリボーンの腕は想像以上に強く、また、優しい。

間近で子供の顔で微笑むリボーンには「やられた」と思ったが、
全てはもう手遅れだった。


「丁度アクア・アルタの時季だ。ヴェネツィアに行ってもいーぞ」
「まだ返事してへんよ」
「必要ねーな」
「無いんかい」
「一生可愛がってやるから安心しろ」

ペット飼う気分やないやろな、とが疑ってしまうほど
リボーンの顔は緩みっぱなしだったらしい。