「何してんだ、お前」
「自主休養」
曖昧ヤマイ。
「・・・・なぁ、松本」
執務時間であるが為、沈黙した十番隊詰所で突如、隊長である日番谷が口を開いた。
近頃、お世辞にも日番谷は「しっかり仕事をこなしている」とは言い難かった。
執務時間内でもボンヤリと考え事に耽ってみたり、無意識に多数の書類を粉々に破いてみたり。
仕事が一番、な日番谷を知っている隊員達は、仕事のし過ぎでストレスが溜まっているのでは、と心配していたが
後ろで上司のフォローをする松本からすれば、迷惑以外の何者でもない。
「(何でも好いから仕事しろよ)・・・・・・何ですか?隊長」
「何だその間は」
「いえ別に。」
「・・・最近、」
敢えて低下する部下の機嫌には極力触れず、日番谷は何とか話を戻そうと努めた。
「最近、の様子がおかしくないか?」
「はぁ・・・またの事ですか。順調そうで何よりです。あたしには別段変わり映えしませんが」
「いやそれがな、アイツ、最近変なんだよ」
「・・・・・・。(変なのはあんただよ)何故そうお思いで?」
松本は、日番谷は日頃から恋人の事を少し大袈裟に気にする傾向があるので、今回も大した事ではないだろうと踏んでいた。
軽く掻き上げた黄金色のロングヘアが、バサリと音を立てて背中を伝う。
そんな松本を一瞥し、何とも言い難そうに顔を顰め、瞳を泳がせた。
「隊長?」
「・・・・拒むんだ」
「は、・・・何をですか?」
「キスされんのを拒むんだよ!寧ろ近づいても来ねぇ」
「はぁ・・・」
「何なんだ、一体。」
本来なら「浮気じゃないの?」と揶揄したい所だが、本気で悩む上司を見て思い止まる。
これ以上仕事を放棄して考え込まれたら、後々自分に面倒事が舞い込んでくるのだ。
今でさえ十二分に忙しいというのに、これ以上無駄な仕事が増えるのは極力避けたかった。
(まぁ、が浮気なんて出来る筈もないし)
そう頭の中で呟いて、ここは無難に答えておく。
「倦怠期じゃないですか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「確か、つき合い始めて3ヵ月目でしたよね。」
「・・・・・・おう」
「それとも、気づかない内に隊長が何かしたか。」
自分で言って、「倦怠期」よりもこちらの方が有り得ると気づいた。
それ位あのふたりには「倦怠期」というものは無縁の言葉だったのだ。
「何かって何だ」
「あたしに訊かないで下さいよ」
日番谷もそう思った(もしくは思いたかった)らしく、後者に食いついてくる。
「最近特に喧嘩もしてねぇしな・・・」
「そうですねぇ」
「あ゛〜〜〜〜っとにわけわかんねぇ!」
「そうですねぇ」
「アイツは何処行った」
「先刻四番隊に書類を持っていくよう頼んだので、四番隊じゃないですか」
「問いただしてくる」
「お気をつけて」
「おう」
と言うのが、詰所を後にするまでの出来事だ。
日番谷の現在地は四番隊詰所。
日番谷の眼前には、ベッドに横たわる恋人がいた。
「・・・何してんだ、お前」
「自主休養」
「ってオイ!この忙しいのにサボりかよ!」
「何かチビがいるー」
「何だとテメェ!大体な、お前最近何で・・・」
「日番谷隊長」
日番谷が例の理由を訊ねようとした途端、その声は第三者の声に遮られる。
大らかで、どこか強みを含む大人な声。
「な・・・・いつから、」
「始めから側についていました」
「・・・・・・・・・。」
四番隊に着た時はしか目に入っていなかった日番谷。(ちょっと恥ずかしい)
「で、何だ。書類の件なら総隊長に────」
「は体調を崩してるのです。お静かに。」
「う、うのはなたいちょう」
「あ、あぁ悪い。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何ィ!?」
「ひつがy」
「お前具合悪かったのかよ!!」
「ちょっとした風邪デス」
日番谷が憤りを露わにすると、は気まずそうに目を伏せて答えた。
「ちょっとした風邪で四番隊詰所前で倒れていたんですよね。」
「倒れ・・・テメェなぁ!!」
「うわーん!!」
「(うるさい・・・)」
卯ノ花が書類に目を通しながら淡々と言う。
そんな卯ノ花の様子とは反対に、新事実を知った日番谷はに掴みかかりそうな勢いである。
「何でお前はそう保身がねェんだ!このバカ!」
「いやあのだって!」
「だって何だ!」
「日番谷に余計な負担とかかけたくないじゃん!」
ただでさえ日番谷は無茶しまくるし、と付け足す。
そう、それもこれも日番谷に余計な心配や負担を掛けまいとした事ばかりなのだが、それは既に逆効果となっている。
日番谷は体を軽く起こしむくれるをギラリと睨むと、再び口を開いた。
「じゃあ最近近づかないようにしていたのは何故だ?」
「気づいてたのかよ!!」
「気づくに決まってんだろお前」
「さすが隊長するどーい☆」
「好いから答えろ」
「・・・・・・。」
が何とか誤魔化そうとしているのが伝わってきて、日番谷は急に不安な気持ちに駆られた。
「もし」 「〜なら」という接続詞ばかりが頭をよぎってまとわりつく。
「」
「お、怒るなよ」
「返答次第だな」
「なら言わなーい」
「」
「・・・・・・っ」
何度かはぐらかそうとしただったが、引き下がる様子のない日番谷に多少狼狽える。
困ったようにの手が頭を掻く。
「あの・・・」
「俺が何かしたのか?」
「、え、」
「俺に、厭きたのか?」
「な、何言って、違うし!全然!違う違うよ!」
「。じゃあ何でだ?」
真っ直ぐに見つめてくる日番谷に、密かに赤面してしまう。
あのー、えっとー、を繰り返している。
そして怒られる(怒鳴られる)覚悟を決めたように、垂れていた眉を上げると口を開いた。
「移るじゃんっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「移るじゃん!風邪が!日番谷に!近くにいったら!」
ましてやキスなんて〜〜〜と続けて、自分の拳で日番谷の額を軽く小突いた。
そんなに、何度かぱちぱちと瞬きをすると、一気に溜め息を吐き出した。
「お前・・・・・なぁ・・・」
「な、なんだ!」
「俺よりも風邪の方が大事なのかよ」
「は?!阿呆かお前!おおおれは お前がだ、大事だから移さないようにしてたんだろ!」
「ヘェ」
「ヘェって、なん」
「少し黙れ」
文句をぶつけようと、開きかけたの口唇は日番谷の口唇で塞がれる。
何だか懐かしく感じる感触に、自然とうれしさが込み上がりそっとは微笑んだ。
互いの口唇が離れると、思い出したように日番谷が部屋を見回す。
「どした?」
「いや、いつからいなかったんだ、卯ノ花」
「あ、忘れてた」
も先程の日番谷のように見回すと、すぐに日番谷に向き直った。
「まぁ別にいっか」
「・・・・・オイ」
「ん?」
「もう、お前・・・・・・・・・平気なのか?」
脈絡なく投げ掛けられた問いの意味がわからず、疑問符を浮かべる。
しかしすぐさま自分の体の事だと理解したように目を見開いた。
「あぁうん、割と楽に・・・・ってあぁ!近づいてるよ!しかもキスしちゃったよオイ!」
「無駄な努力だな」
「(無駄・・・)・・・・・っひつがやのばかー・・・!移っちゃうぞーう・・・」
「好い。移せ」
「え?」
日番谷はそう言うとの体をきつく抱きしめ、もう一度口唇を奪った。
「その代わり絶対俺から離れるな。仕事がはかどらねぇ」
「・・・・・・プロポーズ?」
「それも好いな」
「〜〜〜〜。」
その頃十番隊詰所。
「・・・・・(遅い)皆、もう上がって良いわよ。」
「え、でもまだ時間も早いですよ。それに書類も・・・」
「未処理の書類は全部隊長の机上に置いといて。隊長が片しといてくれるから」
後日談。
その日、遅くまで残業に励む日番谷との姿が見れたとか、何とか。
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こんなのをフリー夢にして良いものかかなり迷ったんですが、折角頑張って書いたんだし
まぁそれもいっか。みたいな感じでフリーにしちゃいました。
だ、誰か持ち帰って下さるんでしょうか・・・!(あわわ
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此処まで読んで下さって有り難うございました。
2005.03.31
相似条件ABC 白雪
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という訳で、誉・・・強奪してきました。盗んできました。
素敵・・・相変わらずひっつー素敵・・・メロメロ・・・・。