雨の日は古傷が痛む。
湿気と気温低下が促すそれに、感傷までもが付属する。
にとって、それは忌々しいものであったが。
「、起きてるか」
エドと出会って、愛されていると知って。
「・・・ああ、入れよ」
愛していると気付いてからは。
それは逢瀬にも似た時間になった。
愛と箍
「雨だな」
「ああ」
同じ布団に潜り、どちらからともなく手を繋いで交わされる会話が心地良い。
しとしとと響く雨音もまるで安堵を誘う音楽に似た振動。
互いの匂いが混じるシーツに包まれる幸せに浸る。
「・・・痛むか、足と腕」
「・・・は?」
平気、と応える代わりにエドの胸には額を寄せる。
エドは赤くなりつつも小さく微笑んでの髪を梳いた。
「最近好きなんだよ。・・・雨」
スリスリと頬を摺り寄せて呟くの髪をひと総摘まみ、エドは顔を近付けキスを落とした。
(猫みたいだ)
純粋に、自分の体温を求められる仕草にエドは堪らなく愛しさを感じる。
まるでその瞬間は、右手と左足にも血液が流れ体温があるように錯覚する。
それほど温かいんだ、とエドは再びの髪に唇で触れる。
「ん、なんだよ・・・」
軽く笑って身を捩るの腰にエドは腕を回しきつく抱き締める。
の視界はエドの腕の中に埋まり鼻から脳内へエドの匂いが侵入して充満する。
甘い眩暈を引き起こしては観念したように力を抜いた。
「案外甘ったれだよな、鋼は」
小さく肩を揺らしてエドの腕にすっぽりと収まったままは笑う。
エドはの髪に頬を寄せてうっとりと目蓋を閉じた。
「うるせえ、好きなんだから仕方ないだろ。
・・・も、良いんだよ。諦めた。の前で恰好良くいるなんて無理なんだよ・・・余裕なんかねーんだから」
一欠片も残さずに心は、君に。
奪われた。
呻く様なエドの言葉には暫らくキョトンとして、次に笑った。エドを見上げて。
柔らかく、底無しに甘い艶やかな笑み。
「・・・・っ」
エドは言葉を失い固まった。何度見ても免疫など付かないソレに一種の寒気が背中を走る。
自分にだけ見せられる表情だ、という、優越感が含まれた快感。
様子を変えたエドにも意を介さずはスルリと腕をエドの首に回した。
ハッとしてエドはから離れようとするが。
視界に入る弧を描いた唇や。
長い前髪から覗く青の双眸や。
肌蹴た衣服から見える鎖骨。
首筋。
微かに空気を振動させて伝わる呼吸音。
それらはまさに“色気”の具現化で。
動きも声も奪われる。
「ソ、ソーゼツ・・・」
呻いてエドは顔を逸らし枕に押し付ける。
しかしは枕とエドの頬の間に手を入れて、無理矢理自分のほうに向けた。
「なにす・・・!!」
「こっちのセリフだ、馬鹿。なんで顔を隠す」
そう言うの表情は意地悪な笑み。
分かってて言いやがって、と、エドは内心舌打ちをする。
「・・・顔、見てたら我慢できそうにねえの、今!!」
「我慢?する必要ねえじゃん」
死にたい気持ちで白状すればはスパッと切り返して、エドは完全に石化する。
は信じ難いほど色気を含んだ笑みで続けた。
「俺はさ、無条件で鋼は恰好イイと思うわけよ」
が言い終わった瞬間、エドはの体を乱暴に引き寄せ密着させた。
いつもの様に触れるだけではない、深い、貪り喰い尽くす様なエドの口付けには一瞬目を見開き。
そして幸せそうに笑ってエドの背中に腕を回した。
こうして少年エドの箍は消滅した。
次の日。宿屋一階の食堂にて。
「えー?起きれないの?仕方ないね、出発は延ばそうか」
「・・・あ、ああ・・・」
「?どうしたの兄さん」
「・・・いや、悪い・・・」
「何が?」
「・・・て、手加減できなくて」
「え?」
「・・・なんでもない」
「・・・?変な兄さん」
同時刻、の部屋。
「鋼め・・・・・」
ベッドから出られないまま唸るがいたとか。
この日エドは甲斐甲斐しくの身の回りの世話をしたとか。
しかし箍を失ったエドが以降も同じことを繰り返すというのは、まあ、また別のお話。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
祝1万HIT!!
殻須さんに捧げる“エドとベッドで甘甘”でしたーーーー!!・・・・・・・・あのう。
もしかしたら誉は、とととととんでもないことをしでかしてしまったのでは・・・。
こ、これは甘甘ですか?誉的に甘甘なんですが重要なのはキリリクしてくださった殻須さんの判断です。
むしろ微エロ・・・ギャッ!!墓穴コース!!
誉は書いてて楽しかったんですが書き終わると不安になります。って誘い受だよなあーなんて考えてる場合じゃなかった。
お粗末な文でスミマセン。そしてキリリクありがとうございました。