それは東方司令部の日常風景になりつつある。
「悪いが、鋼の。と私はこういう関係なんだ」
ロイは言うなりの腰を掴み引き寄せ、顎を持ち上げ口付けようとする。
が、勿論の拳に撃退された。
「完全に拒否されてんじゃねえかよ、無能大佐!大体なぁ、はオレのモノなの!」
エドは言いながらを奪い取り、後ろから抱き締めた。
が、勿論の踵に撃退された。
足元に蹲る二人を冷ややかに見下ろして、はサラリと告げた。
「ロイと俺は上司と部下の関係。俺はエドのどころか誰のモノでもない。・・・お分かりか?馬鹿共が。」
エドとロイは双方睨み合い、の言葉は耳に入っていなかった。
君と僕と彼の関係
「ああいい加減愛想も尽きるってモンだろうそうだろう中尉。
奴らは馬鹿だ。能無しだ。全く役に立たない上に春爛漫な脳ミソときたら救いようが無い」
エドとロイを廊下に追い出し正座させてから、はコーヒーを片手に苛立たしげに吐き捨てた。
目の前のリザは、頷くべきかどうか多少迷いながらの様子を伺う。
リザの淹れたコーヒーが鎮静効果をもたらしたのか、先程よりは落ち着いた表情では溜め息を吐く。
眉間に皴を寄せ、白い目蓋を伏せて、深い青の眼をチラつかせるその姿は一つの絵画のようだ、とリザは思う。
「でも好かれるのは悪い気分じゃないでしょう」
リザが言うと、は一瞬小さく肩を震わせてリザに視線を流した。
そして微笑む。
どこか悲しそうに。
「ああ、・・・そうかもな。だから嫌なんだ」
「・・・?」
「忘れそうになるからな」
何を?とは聞けなかった。
簡単に触れてはならないと直感する。
代わりにリザはからコーヒーの残ったカップをそっと奪い、目を見詰めた。
「何」
不審がるに、リザは目だけで優しく微笑む。
「それでもあの二人は貴方を好きなのよ」
は暫らく視線を交わした後、そっと逸らして。
「・・・・知ってる」
照れたように呟いた。
パタリ。
部屋から出たは後ろ手に扉を閉めて、両側に正座したエドとロイに視線を向けないまま暫らく無言で立っていた。
「・・・?」
その横顔を見上げ見惚れながら、ロイは声を掛ける。
エドは言葉もない様子。
「反省したか。」
「「しました」」
平伏してエドとロイは答える。
は小さく息を吐いて腰に手を当てた。
「起立!!」
「「!!」」
透き通る声が、響く。
それと同時に立ち上がる二人。
まるで躾のようだな、とは内心苦笑しながら、微動だにしない二人を置き去りに歩き出す。
「あんまり追うなよ。逃げたくなる」
色んな意味に取れる言葉を残しては去っていった。
「今日はやけに優しかったな・・・」
ロイは安堵一割不安八割その他一割で呟く。
あれほどの仕打ちをされて優しいと思うあたりにそもそも根本的な間違いがあるのだがそれはまあさておき。
「・・・つうか、大佐、本気で邪魔。」
「なかなか言うな、鋼の。しかしその言葉、綺麗に包装してからのしつけて叩き返そう。」
バチバチバチ!!
二人の間に火花が散る。
表現が古典的ではあるが、古典的というのは即ち昔から使われた表現であって。
それはつまり他に類を見ないほど的確な表現といえよう。
現に偶然通りがかったハボックが、己の身の危険を瞬時に察知し無視を決め込んだ。
「が迷惑がってんの、大人の経験ってヤツでそろそろ自覚したら?」
「が鬱陶しがっているのを、子供らしからぬその生意気な聡さで気付いたらどうかね?」
「大体セクハラが過ぎるんだよ!」
「君は引き際というものを学習したまえ!」
「このエロ無能大佐!!」
「根暗チビ!!」
喧々囂々。最早人類の底辺の口喧嘩。
痴話喧嘩は犬も喰わないと言うが(?)、この二人の喧嘩はハイエナもハゲタカも回避する。
「雨が降っただけで微塵も役に立たねえ不能が!!」
「不能とは失敬な!誤解を招く言い方は却下する!口の利き方に気をつけたまえ、腹黒微生物小僧!!」
「誰が顕微鏡倍率MAXでも確認不可能なミラクルチビかああああ!!」
「その自虐性が滑稽だとは思わんのかね!?」
「五月蝿ぇ、この自意識過剰自己顕示欲莫大男!!」
響き渡る罵詈雑言。
終わりの無い戦いに見えた、その時。
ドチュンドチュンドチュン!!!
ガンガンガンガン!!!
「2人とも、いい加減にして下さい」
無表情のまま、銃弾を新たに詰めるリザと。
「反省の意味をその身体に刻むぞ、大ボケ野郎共が」
満面の爽やかな笑顔で2人の額に銃口を突き付ける。
「「ごめんなさい」」
純粋な恐怖に泣き出しそうなのを必死で耐えながら、エドとロイは再び平伏して謝った。
後日談
「にしたってよ、。あんまりにも報われなさ過ぎだろ、あれじゃあ」
煙草を吹かしながら心底同情の色を含んで呟くハボックに、は鼻で笑って冷たく言い放った。
「報われたいなら俺以外を選べば良い。責任転嫁されるのは不本意だ」
「それがあんまりだっての」
「知るか」
「で?正直どっちが上な訳?」
は軽く考える素振りを見せて、ニタリと笑う。悪魔の笑みだ、とハボックは身震いした。
「ま、確実なのは・・・・揃ってヒューズよりは下って事だ。」
「あー・・・オレ、こういうの得意分野じゃねえけど・・・・心底同情するわ」
「ははははは。」
そして今日も今日とて東方司令部は日常を繰り返す。
「から離れろ大佐!!」
「鋼のこそ離れたまえ!!」
「テメエ等2人とも離れろ色ボケしやがってカスが!!」
ドチュンドチューーーーーン!!
それを周囲が平和の証拠だと思うには、もう少しの慣れと諦めが必要のようである。
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魁羅洲様。もうホント、誉は自決覚悟です。ハラキリ手前で待機です。
すんごく萌えだったんですよ、誉的に、争奪戦は。
なのに、結果・・・こんな、こんなただのガキの喧嘩みたいに・・・・・くうっ・・・・!!
誉の文才の低レベル加減を呪ってくださって結構です。
もう、とにかく・・・リクありがとうございました。捧げます。捧げさせてください。
そしてごめんなさい。